米スタンフォード大学のビジネススクール(経営大学院)は、一代で財を成した億万長者や現役の最高経営責任者(CEO)を輩出している名門校だ。だが、卒業生の中には、週最大4日、午前2時前後に起きてトイレ清掃をするロス・ペダーセンさん(2016年卒)のような人もいる。
2月初めまでペダーセンさん(25)は、ダラスのヘッジファンド、ベルダ・アドバイザーズのバイスプレジデントとして、投資銘柄・企業の選別を行っていた。在学中にパートタイムで雇用され、卒業の約1週間後にフルタイムで入社。約5万5000ドル(現行レートで約610万円)の学生ローンを抱えたペダーセンさんに、6桁の年間報酬パッケージが提示された。だが入社してわずか数カ月で公共の利益になる仕事をしたいという思いが「くすぶる」ようになったため、米陸軍に加わって州兵になる準備のため上司の理解を得て1年間の休暇を取得した。
ペダーセンさんの例は、スタンフォードの経営学修士(MBA)取得者がその他MBA取得者より収入が多い理由を説明する一助になる。彼の元クラスメートの多くはコンサルティングやプライベートエクイティー(PE、未公開株)投資会社など6桁報酬の職に就職した。ブルームバーグ・ビジネスウィーク(BW)誌の米経営大学院ランキングで、MBAプログラムでハーバードに次ぐ2位にランクしたスタンフォードでは、典型的な仕事に落ち着くよりも自らの情熱を追い求めることが奨励されている。
BW誌の調査結果によると、スタンフォードMBA取得者が卒業から1年後に手にする報酬は、ハーバード大学の経営大学院とペンシルベニア大学ウォートン校を抑えてトップ。 近年のスタンフォードMBA取得者の卒業後6-8年後の年収は28万5000ドル(約3200万円)と、ハーバードと並んで最高だった。
スタンフォードMBA取得者やその他の関係者らは、スタンフォード大が誇る名声やサンフランシスコ湾岸地帯(ベイエリア)の生活費の高さ、米グーグルやフェイスブックといったシリコンバレー企業との距離の近さが全て高報酬をもたらしていると話している。また、スタンフォードのウェブサイトによれば、18年の入学が認められたのは志願者数のわずか5.1%。ハーバード(9.6%)やウォートン(12.7%)よりも競争率が高いことと、比較的少人数制であることも卒業後の収入を押し上げているとの指摘もある。
BW誌の調査では、MBAプログラム上位50位のうち、卒業生による起業率はスタンフォードが最も高かった。近年のMBA取得者全体の平均的な起業率は3%程度だが、スタンフォード大キャリアセンターのディレクター、メーブ・リチャード氏によるとスタンフォードでは約16%で、水準はここ5年ほど比較的落ち着いている。
スタンフォードの名声がいつまで持続するかは不明だが、コンサルティング会社チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスのジョン・チャレンジャーCEOは「シリコンバレーが光輝き続ける限り、スタンフォードの卒業生もその輝きの一部を反映するだろう」と話した。
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