多くのMBA課程修了者はプログラムがキャリアアップに貢献したと話している
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は最近、米国の大学で経営学修士号(MBA)課程の入学者が減少し、より短期かつ専門的な修士課程やオンライン課程の人気が高まっていると伝えた。こうした状況を巡り、MBAの価値を巡る議論が巻き起こった。
現役の学生や卒業生、企業の採用担当者や学者など300人を超える人々が意見を寄せ、オンライン課程のメリットやMBA入学前に実社会で経験を積む必要性などを訴えた。入学者減少の原因として、力強い労働市場や学費の上昇、負担の大きい学生ローンなどがある。
それでも、多くの読者はMBAがキャリアアップに貢献したと断言した。オンライン学習が学校での全日制の授業に匹敵し得るとの考えには反対だった。財務諸表の読み方などMBAで学ぶ基本的な内容について、高校などもっと早い段階に組み込むべきだとの意見もあった。
以下は、コメント欄への投稿やニュースレターおよびポッドキャストへの電子メール、記者の取材で得られた意見の一部。短縮・明確化のため、編集を加えたものもある。
従来型の対面式MBAプログラムが最良
MBAのオンライン課程というものが理解できない。1980年代半ばに私が履修した際、MBA課程の大半はケース分析で、その討論への参加具合によって成績の半分が決まるのが普通だった。私から見て最も大きな違いは、その場で分析しなければならなかった点だ。仕事の会合では現場での貢献が求められる。その場を離れて、オンラインで参加する訳にはいかない。
――ミシガン大学でコンピューターサイエンスを教えるニコール・ハミルトン氏(68)
全日制MBAプログラムは、オンラインでは得られない同級生との交流を促進し、チームワークの経験や能力を伸ばすのに役立つ。学生が給料を犠牲にして全日制課程に通うのは、時間やお金を投じてMBAを取得すれば長期的に報われると確信しているからだ。私はまずまずの仕事をやめて全日制MBA課程に行き、新しい仕事で給料が大幅に増えた。メリットは何年も続いた。
――エンジニアと監査人を引退した、ペンシルベニア州のサイレシュ・カパディア氏(73)
オンラインMBAには重要な要素が欠けている
社会ではデジタル化が進んでいるが、通学式のMBAはそれでも強いバリュープロポジションを提供する。それには「知識」と「人」という2つの大きな要素がある。オンラインMBAは経済的だが、提供できるのは知識だけだ。授業や教授はオンライン課程に配置できるが、討論や知り合いはそうはいかない。そのため、オンラインでのMBA取得への流れによってトップクラスの対面式MBAのネットワークがさらに強力かつ特別になる。
――ビジネスモデルを開発するフロリダ州のアンジェル・アントリン・ムリロ氏(24)
MBAの学費は高過ぎる。バリュープロポジションの向上が必要だ
「エリート向け」全日制MBAプログラムを修了した経験から断言できるのは、そうした学校でさえ、上昇の一途をたどる学費にいら立つ学生がかなり多いことだ。上位校に学費を下げる意思がなく、価格競争を始めようとしないのは、価値低下を示唆することになるリスクが一因だ。無関心のせいでもある。MBAにはなお価値があるが、人々がもう学費を払いたくないと思うポイントに全ての学校が達するのは時間の問題にすぎない。転換点は学校側の認識より近い。
――ニューヨーク州の経営コンサルタント、ロバート・モランディ氏(28)
オンラインMBA課程は重要なニッチ市場を生める
失業中に(オンラインの)MBA課程を始めた。最初の授業の1週目が終わったところで採用が決まった。世界のどこにいようと授業はいつでも受けられる。空き時間に授業を入れることができた。会計の学士号を持っていたため、プロジェクト管理や生産・運営管理の知識を広げたかった。MBAは1つの資格だと思っている。
――カリフォルニア州の会計士、ブライアン・スティーブンス氏(49)
MBA取得はキャリアの財産
良い仕事と家庭があったため、全日制MBAプログラムには通わなかったし、そうする価値はなかったと思う。大学の教授の1人が、博士号取得のために大学に残ったせいで得られなかった給料を取り戻すのに少なくとも10年かかったと話していた。私の場合、全日制に通えば給料だけでなく、雇用主による授業料補助も失っていた。MBAの元は取れたと思う。私はエンジニアで、MBA後には何年か経営に関与した。それから技術畑に戻ったが、以前より高い水準だった。
――コロラド州のエンジニア、スチュアート・ボール氏(62)
MBAで教わるスキルはもっと早くに教えるべきだ
損益計算書やマーケティング、企業や社会の責任、初歩的な金融の基礎は高校生の段階で理解しておくべきだと思う。必ずしもそれほど複雑でないが、こうした事柄は経済の仕組みの基本だ。こうした課程をもっと初等・中等教育の授業に盛り込んでいないのは意外だ。企業の意味やその仕組みをより理解するのに役立つ可能性があり、大学入学時にMBAの可能性を排除することもないだろう。
――マーケティング責任者を引退したアリゾナ州のトーマス・ピクルス氏(70)
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